アザミミチナミダミチ

合体-3

普段ならパウダーを叩き終わったあとはパジャマを着せ直してまた彼女を定位置へと戻すのだが、今日は少し気が変わった。彼女の手入れをしたばかりだが、彼女としよう。俺は着ている服を脱ぎ始める。上は脱ぐ必要がないから、下だけ丸裸になって、上は着たまま。なんとも間抜けな姿だが、誰が見ているわけでもないから、気にする必用はない。

ローションのボトルを手に取ったところで俺はふと思い立つ。今は夏だから彼女自身が冷たいのはさほど気にはならないが、アソコがヒヤッとすると夏でも一瞬縮みそうになる。彼女とする前にホールとローションだけでも湯煎にかけて少し温めておくか。

俺はアソコをぶらぶらさせたまま、部屋の隅でうっすら埃をかぶっている電気ポットの方へ向かうとスイッチを入れた。この電気ポット、俺も缶コーヒーだけ飲んでいるわけではないし、冬はインスタントコーヒーを作ったりとそれなりに役立ったもんだが、暑くなってからはほとんど触っていない。中の水はいつ入れたものだかわかりゃしないが、なぁに、飲むわけじゃないから平気だろう。

しばらく待つと電気ポットの湯が湧いた。俺は早速湯煎に取り掛かる。要は挿れた時にヒヤッとしなければいいのだから、時間は短くていい。これが冬なら念入りに温めるんだが、今の時期はその必要はない。俺はホールとローションを湯から引き上げると、彼女の脚を両手で開き、ただぽっかりとホールを装着するための穴だけが空いている、人間の女性のそことは似ても似つかないそこにホールを装着した。

日本では、女性のそこをリアルに作ることは禁じられているから、彼女の外見の他の部分の造形がどんなにリアルでも、その部分がただのぽっかりとしたホール穴でしかないのは、日本の法律が変わらない限り致し方ない。海外製のラブドールなんかはその部分もリアルに作られているようだが、日本に輸入する場合はその部分を切り取らねばならないそうだ。しかし、俺は彼女のその部分も含めて、彼女を愛している。

俺は彼女の腰を持ち上げると、彼女の腰の下に枕を差し入れる。それからぐっと脚を開いた。ぐっとと言っても、あまり無理に開きすぎると股のシリコンが裂けてしまうから、俺が入れる程度に、だが。

ラブドールというヤツは、関節は曲がりにくいし、しかも可動域は人間に比べると相当狭い。脇や股のシリコンはよく裂けるから、リペアキットがセットで付いてくるくらいだ。しかし、裂けた部分を補修するとどうしても補修跡が残ってしまう。だからなるべく避けないように取り扱うのが一番だ。ま、気を付けててもたまに裂けるんだけどな。

可動域の狭さや、裂けやすいこと、それからホール穴の位置なんかもあいまって、彼女とする時は体位が限られるんだ。そうそう、ホール穴の位置な、多分だが、この位置設定なのは写真に撮った時にぽっかり空いたホール穴が前からも後ろからも見えないようにこの位置なんだろう。ラブドールを作っている会社のサイトにはラブドールの裸の写真が載っているが、あのホール穴が見えてしまうと魅力的な写真にはならないだろう。

無論、写らない角度で撮影するだろうし、写ってしまったものなど載せないだろうが、できるだけ写りにくい位置にホール穴を作ったほうが、写真の幅だって広がる。また、ラブドールを買う人間で実際にラブドールと一戦交えてから買う人間はあまりいないだろう、と、俺は思う。

ショールームで買いたいドールの実物を見ることは可能だが、一戦交えるとなるとラブドール風俗なんかか。しかし、ラブドール風俗に自分が欲しいドールなんてほぼ置いていないし、まぁ、それでもラブドールというものの使用感がどんなものか確かめられるだろうが、ショールームもラブドール風俗も地方には存在しないから、どちらにしろ地方在住者としては厳しい。結構値の張るものだというのに、実物を一切見ずに購入する人間だってそれなりにいる。

だからこそ、メーカーは写真うつりを最優先してホールの位置を決めたんじゃないかと俺は邪推している。なぜって、腰の下に枕を敷かないと、どうにもヤり辛くてな。

そんなヤり辛い彼女と俺は、なんだかんだと合体を果たす。彼女には意志も感情もないから彼女を気持ちよくする必要などなく、ただ俺が腰を振れば良い。と、その時だった。彼女の首が外れた。そう、彼女の首が外れたんだ。

Return Back Next

Copyright © 2018 アザミミチナミダミチ

Template&Material @ 空蝉