アザミミチナミダミチ

歩くこと、生きること-1

私は砂漠の中にいた。どうして私がこの場所にいるのか皆目見当もつかなかったが、気付けば私は砂漠の中に立っていた。見渡す限り砂しかなく、空には雲がない。雲のない空の中で、大きな太陽が私を照りつけていた。

人がその場所にいるのには、理由があるのだと思う。たとえば乗っていた飛行機がサハラ砂漠に不時着したのだとか、もともと砂漠の中で怪獣として生まれたのだとか。私は飛行機に乗っていたわけでもなく、この砂漠で生まれたわけでもない。どうして私が砂漠の只中にいるのか、私にはわからなかった。

照りつける太陽のせいで喉が焼けるように熱い。汗をかくもののその汗は見る間に渇き、体にはうっすらと塩が浮いていた。私は自分の出した塩分のせいで白く乾いた腕を見て、出ては瞬く間に乾く汗を惜しいと感じた。私の体は水を欲していた。

私は水を欲して歩いた。空には雲もなく、見渡す限り砂しかない。歩くことに希望を見いだせずにいたが、それでもまっすぐに歩き続ければいつかどこかに何かが見つかるかもしれないし、砂漠から抜け出せるかもしれない。私は歩き続けるしかなかった。

何もない砂漠には私の残した足跡がまっすぐに続いていた。私と砂漠を照らす太陽は赤く染まり、これから沈み行こうとしていた。

夕日が美しい。今日はもう歩くのをやめよう。私はその場に座り込み、ただ夕日を眺めた。

日が沈みきった後、私はその場に横たわった。体が少し砂の中に沈んだ。ここには砂しかない。だから、あまり寝心地は良くなくとも、眠るならここで眠るしかないだろう。

いつの間にか空には星が浮かんでいた。雲のない空は小さな星まで余さず見せて、大きな月がまぶしかった。明日には何か見つかるだろうか。朝起きたら私は自分の部屋にいて、夢で良かったとそう言っていたらいいのに。

考えるのはやめよう。そして眠りにつこう。明日また歩くために私は砂の中で目を閉じた。

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