アザミミチナミダミチ

窃視 2

着せた服を捲り上げ、いざ実践。そう思ったはずなのに、自分を見つめる視線が気になる。汚れなき無垢な瞳。この子はこれから俺が何をするか知らないんだ。

ただの人形だ。心なんて無い。これは俺専用の肉便器。魂を持たない人形だ。自分に言い聞かせるように心の中で何度も呟く。

ただの人形だ。心なんて無い。これは俺専用の肉便器。魂を持たない人形だ。……何度も自分に言い聞かせているのに、このいたいけな女の子に欲望を注ぐ事ことができない。俺は服を元通りにし、彼女をそっと抱きかかえソファに座らせた。

人形から目をそらし、考える。俺は幼女に何を求めているんだろうか。

幼い女の子は無垢であってほしい。男の欲望なんて知らない存在であってほしい。清らかな天使であってほしい。たとえそれがただの人形であっても。

でも、それじゃあ何のために買ったんだ。俺の性欲を満たすためだろうが。

――君を襲ってしまいたい。なのに君に触れられない。君を汚してしまいたい。汚れを知らぬ天使でいてほしい。

俺の中の矛盾にこたえられないまま、ひとつため息をついて部屋を出る。音を立てずにそっとふすまを閉めると、俺は少しの間ぼうっとしていた。

またひとつため息をつき、ほんの少しだけふすまを開けて人形の方を見る。脚を広げてソファに座っているせいで、ミニスカートがめくれて白い下着が見えていた。彼女は自分の下着が見えていることに気付いていない。何より俺に見られていることにも気付いていない。

俺はふすまを閉めて先ほどの情景を思い浮かべる。ボトムスの前を開け、その中の物を握りしめた。

――君は何も見ていないし俺に汚されてはいない。君は天使のままそこにいればいい。



永遠の美少女がいないように、永遠に美しいままのラブドールもない。人形は歳をとらない。けれど、シリコンだって劣化する。ブリードでべたつくこの作り物の肌も、いずれは潤いを失い、干からびてひび割れる。

――少女の美は失われるからこそ美しいのかもしれない。いずれ君も醜くなるだろう。俺はその時まで君を好きでいられるだろうか。もしかしたら新しい子を迎えるかもしれない。今日の俺は君のことを愛しているけれど、明日の俺の事なんてわかりはしない。

ただ、それでもただ……

君への愛がある限り、俺は君に触れないと誓おう。

-end-

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