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ヌバタマノカミノカノジョ-9

十和子先輩の顔をイメージする。彫りの深いエキゾチックフェイス。メイクはしっかりきっちりしているけどケバくはない。目は大きいけど、可愛らしい感じの目ではなくて、目頭がしっかりと切れ込んでいて、切れ長でややつり上がっている。鼻は鼻筋がかなり細めで、鼻先が尖っている。日本人ではかなり珍しい鼻の形。唇は薄い。リップメイクはハッキリした色を使っていた。輪郭はシャープで、顎先が尖っている。

鏡の中のあたしを眺めて、大きなため息をついた。これは難題かも。まず骨格が違う。ベースメイクから立体感作りをしてもあたしの骨格では限界が有る。眉骨の高さとか全然違うし。

あたしの目はスッピンでもそこそこ大きめでハッキリした二重だけど、縦に大きい感じの丸い目だし。あたしも鼻筋は通っているし、鼻先の形も悪くはないんだけど、鼻筋太めだし、日本人であんなに鼻先が尖ってる人なんてそうそういない。

当然あたしの鼻先もあんな形ではない。唇はぽってり厚めだし。輪郭はやや丸めの卵形。ちゃんと顎有るし、横顔では鼻先と顎先を結んだラインにきっちり唇が収まるんだけどね、頬がふっくらしてるせいか、十和子先輩のシャープな感じとは違うんだよね。

あたしは鏡の前でもう一度大きなため息をついて、化粧品を荒々しく漁った。女神様そのものにはなれなくても、出来る限り近付けよう。

ベースメイクは立体感重視。これはいつもの事だけど、ただ、とにかく自然に上品に。いかにも「影色入れてます」なんてのは絶対ダメ。彫りが欲しいからって下品になるんじゃ本末転倒だもの。アイメイクは……目の形はかなり違うけど、十和子先輩が細めながらもリキッドでしっかりアイラインひいてたのは不幸中の幸いかも。アイラインで多少は近付けるかも?

鼻はどうしようもないかも……。唇は実際のラインよりもほんの少しだけ内側にラインを取れば少しは薄く見えるかな? ハッキリした色は基本使わないから勇気いるけど。

あたしはそんなことを考えながら化粧をしていった。メイクの終わったあたしの顔は……正直微妙だった。あたしはメイクもうまいつもりだったんだけど、それはつけまとカラコン有りきでの話だったみたい。つけまとカラコンという最強の鎧をなくしたメイクは、戦場へ向かうにはどうしようもないくらいに頼りなく見えた。

つけまもカラコンもしなくても、十和子先輩の瞳には凛とした強さがあった。けど、あたしの目にはそれが無い。十和子先輩のメイクはわりとしっかりめながらも大人っぽくて上品で、全然ケバさは感じさせず、洗練されていた。

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