アザミミチナミダミチ

ヌバタマノカミノカノジョ-13

十和子先輩と別れ、学校を出て、あたしは十和子先輩の行きつけのショップへと向かった。そこは女子高生が入るにはちょっと大人っぽすぎるお店で、あたしのよく行くお店の明るくて派手な雰囲気とは違う、その落ち着いた雰囲気はあたしに威圧感を与えた。

少し遠巻きにお店を眺めるあたし。お店を出入りする女性達は、やっぱりあたしよりも少し世代が上の人ばかりに見えて、あたしには場違いだって、そう言われているみたいだった。学年が違うとは言え、十和子先輩が同じ女子高生だとはとても思えない。それでも、十和子先輩に少しでも近付きたいあたしは、意を決してお店の中へと入っていった。

他の客も、接客業であるはずの店員でさえ、あたしを見つめる視線が見下しているかのように見えた。その視線が凄く痛くて、逃げ出したい衝動にかられる。でも、ほんの小さな一歩でも良い。あたしは十和子先輩に近付きたいから、視線に耐えながら服を探した。

「何かお探しですか?」

店員のひとりがあたしに話しかける。その店の服がよく似合う、スラリとした大人の美女。……でも、十和子先輩の方がずっと綺麗。その店員の顔に張り付いた仕事用スマイルに愛想笑いを返しつつ、あたしはその店員と共に服を探した。

チラリチラリと視界に入る値札に一瞬顔がひきつりつつも、なるべく表情を崩さないようにしながら、あたしは沢山の服を抱える。頭の中では必死に算数をやってるんだけどね。でも、それを顔に出してしまったら、十和子先輩から一歩遠ざかってしまう気がしたから。

支払いを終えると、財布の中のお金はごっそりとなくなってしまった。でも、これでまた少し十和子先輩に近付いた……と信じたい。



翌朝、あたしは昨日買った服に身を包む。鏡の中のあたしは、なんだか服に着られている気がしなくもないけど、気付かないふりをして学校へ行く。いつか、きっといつか十和子先輩みたいに、こんな服が似合う日が来るって信じよう。

今日も同じグループの子達と定例の誉めあい合戦をしてから、あたしは席につく。誉め言葉が上辺だけなのは昨日と同じ。でも心なしか、なんだか態度までがよそよそしく感じた。どうしてなのかは自分で解ってる。でもそれは今のあたしにとって、凄くどうでも良い事だから。

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