アザミミチナミダミチ

ヌバタマノカミノカノジョ-14

授業中、あたしは上の空で考える。髪も、メイクも、服も変えた。でも、見た目だけ真似したところで意味ないんだよなぁ。いや、どんなに真似したって十和子先輩にはなれないことは解ってるけど、十和子先輩があたしの女神様なのは、決して見た目が美しいからという理由だけではないからさ。

凛として美しく、媚びを見せない知的な女性。そういえば、十和子先輩に初めて出会った図書館だった。十和子先輩が読書している姿……きっと綺麗だろうな。そうだ、お勧めの本とかきいてみよう。

あたし、本なんて恋空が流行った時にみんなで回し読みしたくらいで、その恋空だって結局最後までは読まなかったんだけどさ。でも、十和子先輩のお勧めする本だったら、きっと読破できると思う。あぁ、早く放課後になんないかな? 早く十和子先輩にお会いしたい……。



一限目を終え、教室内がにわかに活気付く。二限目までの短い休憩。次の授業の準備をしつつ近くの席の人と喋ったり、短い休憩ながらも席を立って友達のところまで行って話をしたりするのはよく有る光景。教室の後ろの方で、あたしのグループのメンバーが集まっていた。

あたしのグループはあたしの席だけが教卓の真ん前で、他のメンバーの席はみんな後ろの方だから、それ自体はさほどおかしな事ではないんだけど……。

なんかさ、ちらちらこっち見てんだよね。声は聞こえないけど、表情から見るに、あたしの陰口大会ってとこ?  まぁ良いんだけどさ。

髪を黒くして、カラコンもつけまもやめて、服装も変わったあたしは、グループ内で明らかに浮いてるからね。 でもどうでも良い。本当に今のあたしにとって、そんなのは取るに足らないことなんだから。



待ちに待った放課後。あたしは一目散に三年A組へと向かった。三年生の教室の前に立つの、最初は凄く緊張したんだけど、なんかもう今ではすっかり慣れちゃった。十和子先輩を待っている時の高鳴る胸の鼓動は同じだけどね。

教室から出ていく三年生達を眺めていると、スラリとした長身の美女が優雅に出てきた。十和子先輩、やっぱりいつ見ても綺麗……。

あたしを見つけた十和子先輩はこっちへ向かって来る。毎日のようにこうして放課後に押しかけてるもんね。ちょっとあきれたような笑みを浮かべていた。

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